原理・構造・回路

パワートロンの作動原理

1. サイリスターの点孤位相位置と出力電圧の関係

図9-1はサイリスターの点弧位相位置と出力電圧波形を示したものです。 π→0の位相角間を12KHzのパルスを用いて制御します。 点弧位置が進むとサインカーブの出力電圧の面積が増えてきます。 これは出力電圧が上昇している事を示しています。
図9-2は点弧位置と実効電圧の変化を図示したものです。点弧位置が進むに連れて電圧は(e)→(d)→(c)→(b)→(a)と変化しこれは実効電圧が 0→25%→50%→75%→100%の様に上昇した事を示します。電圧の上昇は多少S字形に歪みますが、制御基盤(PCB)によって直線になる様に修正します。

位相角及び電圧波形
図9-1
トリガー位置と実効電圧
図9-2

2. パワートロン始動器の点孤のプログラム

図10はパワートロンの点弧のためのブロック回路です。
図11は点弧のタイミングを示したもので、C固有の波形の電圧とプログラム信号Dより送られる指示電圧の高さが一致した時、サイリスターはトリガー(点弧)します。
プログラム信号Dはポテーションによって任意に変化させる事が出来ますので傾斜を大きくすると電圧の上昇が早くなります。
電圧上昇の傾斜は負荷を始動するための最適な上昇率を微調整ができます。

図10

図11

3. 始動する電動機の制御

パワートロン始動器は電動機の入力電圧のみを制御します。

誘導電動機は固有の特性を持っています。またインピーダンス(抵抗)Rは始動中も運転中もほぼ同一となります。電動機の始動中の過渡期は次のように電流Iは入力電圧Vに比例します。従って入力電圧を制御する事によって電動機の始動電流が制御できます。
V = IR
なお電動機の特性によって始動中の電流は大きく変わります。電動機特性上の始動電流の小さな電動機が望ましいと考えます。

パワートロン始動器の構造

1. サイリスタースタック

サイリスタースタック
図1
左の図の様にAC電源の1相に2個のサイリスターを逆並列に配線して、これを3組まとめてサイリスタースタックとします。
サイリスタは整流器でK1-A1側は(+)の半波K2-A2側は(−)半波が通過します。従ってサイリスターが点弧している時はコンタクタースイッチののようにサイン全波を通過できると同時にバックパワーも通過します。
従ってインバーターの様にバックパワーの為の回路は必要ありません。またスタックの使用電圧は200V/400V共用出来ます。

2. サイリスタースタックの構造

サイリスターは通電すると熱が発生します。その熱量は通電電力の0.05%です。その為ヒートシンクまたはヒートパイプを用いてサイリスターを冷却します。

(1)ヒートシンク型
ヒートシンク
図2
左の図はヒートシンクにサイリスターを組付けた形状です。冷却ファンが停止した場合ヒートシンクの温度が上昇します。その時常備されているサーモスイッチが80℃になると回路が作動して警報または電動機をトリップさせます。 形式EN-01,02,03,04,05,06,07として使用します。消防関係は形式M1として使用します。

3. 大容量のサイリスタースタック

パワートロン始動器は大容量の始動器に適していて、実績ではAC440V仕様で2,200Kwまで使用しています。

パワートロン始動器 図6
図6

標準形式

EN-08, EN-09, EN-10
EN-11, EN-12

また消防形式 M4として使用しAC400V使用700Kwまでの型番を準備しています。

EN-24, EN-36

AC440V 2,200Kwまでの実績があります。

パワートロン始動器 図7
図7

4. 制御基盤(PCB)

サイリスターのトリガー(点弧)のためのゲートコントロールに制御基盤が使用されます。制御基盤は450ヶ以上の部品で構成された始動機器のすべての特性が組込まれております。

制御基盤図8-1

図8

図8には特性設定のポテーション及びその動作の表示LEDが装備されています。

ポテーションVR2:始動初期電圧を設定します。
VR3:ランプスピード(電圧上昇)を設定します。
VR4:セービング(省エネ)電圧を設定します。
VR5:定電流始動の時間を設定します。
VR6:定電流始動時の初期のソフト立ち上がり時間を設定します。
※詳細は取扱説明書を参照してください。

以上のポテーションの調整によって任意の始動特性を設定できます。

LED表示灯によって作動状況を確認できます。
赤色:運転準備中
緑色:始動中
赤色:定電流始動作動中
黄色:欠相表示

なお、制御基盤の電源は母線よりトランスで 32Vにして供給します。

波形について

4. パワートロン始動器の波形について

実際の始動中の電圧、電流の波形をオシログラフで撮りますと次の様になります。負荷はAC440V 770Kw 60Hzのサイドスラスターです。

オシログラフ 図12

図12

始動時の全体波形です。この波形のA部及びB、C部を拡大しますと図13、14、15の様になります。
図16は運転中の波形です。

全体波形 図13

図13

A部の拡大を見るとサインカーブの中心部が欠けた波形になっています。
これはNASAの特許中のカットオフ機構が作動しているためで、サイリスターが点弧中、任意の位相位置でオフ出来るため、0点を通過する時に歪みが少なく正弦波と比べてその延長線はほぼ同形です。
これは高調波が非常に小さく出来る機構です。

サインカーブ 図14

図14

B部拡大 A部に比べてサインカーブの頂点の欠損部分が小さくなっています。

正弦波 図15

図15

C部拡大 全体にほぼ正弦波に近づいています。

波形正常 図16

図16

運転時の波形正常な正弦波です。
以上の様に運転時は歪みの無い正弦波で運転されています。始動中(電圧上昇中)の高調波含有率は8.7%。運転中は0.4%になり、ほぼノイズレスで使用できます。

高調波について

5. パワートロン始動器の高調波について

パワートロンの高調波は非常に小さくノイズレスとして使用して頂いております。 高調波含有率は始動中(電圧上昇中)は8.7%運転中は0.4%です。 またヨーロッパ規格CEマーキングを平成10年9月にDet Norske Veritas AS(ノルウェー検査機関)より取得してます。 実績的には発電機と負荷とほぼ同じ容量の機器の始動器として使用していますが、発電機の電圧の変動もなく長期に 使用しています。

パワートロンの高調波 図17

図17

始動中の電圧、電流、波形 始動中の高調波

始動中 図18

図18

始動中の高調波
5,7,13次に高調波がみうけられます。

始動中の高調波 図19

図19

始動中の総合高調波含有率は 8.7%です。

運転中の電圧 図20

図20

運転中の電圧、電流、波形

運転中の電圧 図21

図21

運転中の高調波 高調波は記録されません。

始動中の総合高調波 図22

図22

始動中の総合高調波 含有率は0.4%

CEマーキング

パワートロン始動器はCEマーキングを取得しています。高調波ノイズによる人体及び他機への影響は皆無です。